素粒子物理学博士のメモ

式変形や誤植等を解説

フェルマーの原理の解釈について

フェルマーの原理とは、「2点を通る光は、可能な経路のうち最短時間でいけるような経路を伝搬する。」

http://www.a-phys.eng.osaka-cu.ac.jp/kato/genko/March/March.html

というものです。この原理を用いると、光の「始点」と「終点」を指定した場合、光の経路が計算できます。

しかしながらこの事実について、誤った解釈が非常に頻繁に見られるので、ここで解説します。誤った解釈とは、「光は事前に最短経路がわかる」というものです。因果関係がおかしいので不思議、と言う人がよくいます。

 

実際の現象、例えばレーザーポインタを想像してください。

光を出す際に指定できるのは、「始点」と「方向」です。光は出された方向に直進し、屈折率の異なる物質に入った場合はホイヘンスの原理によって決まる方向に曲がり、その後また直進し、終点が決まります。すなわち、

『「始点」と「方向」によって、光の「終点」が決まる』

のです。

『「始点」と「終点」によって、光の「方向」が決まる』

のではありません。

フェルマーの原理は「始点」と「終点」という結果から、光の方向を求めることを可能にするものです。レーザーポインタで光に終点を指定し、光が最短経路を事前に察知して正しい方向に出て行くのではないのです。

 

もっとわかりやすく言うと、例えば

x(t)+x(t+1)=x(t+2)

という関係があったときに、フェルマーの原理は単に、

「x(t)とx(t+2)を指定すれば、x(t+1)が決まる 」

といっているだけで、

「原因がx(t)とx(t+2)、結果がx(t+1)」

という因果関係を述べているのではないのです。

 

(なお、量子的な効果が無視できない場合は、「始点」「方向」「終点」を完全に指定することはできず、1つの光子が複数の経路を通ることもあります)

 

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